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千年の孤独

田中泉(タナカ セン)によるレビューブログです。

僕たちは世界を救うことができない。

ゲーム

「鬱ゲー」として有名なゲームソフト、リンダキューブ。ジャンルについて公式サイトでは「サイコスリラー+ハンティングRPGと表記され、PSへ移植された「リンダキューブアゲイン」はPSソフトで初めて倫理規定マーク(「暴力やグロテスクなシーンが含まれています」と書いてある赤い三角のあれです)が付けられた怪作である。ゲームデザイン、シナリオは「俺の屍を越えてゆけ」の桝田省治。それまで「天外魔境Ⅱ」で王道のRPG制作に携わったストレスからアンチテーゼとして作ったとされているが、その「天外魔境Ⅱ」もかなり毒々しい。幼少期に遊ぼうものなら、確実にトラウマになっているだろう。「天外魔境Ⅱ トラウマ」で検索すれば、その意味が嫌という程分かるのではないだろうか。

 

リンダキューブ」に話題を戻そう。

 

リンダキューブ アゲイン

リンダキューブ アゲイン

 

 

この「リンダキューブ」はそれまでのRPGとストーリー、システムが全く異なる作品だ。一般的なRPGの目的といえば「勇者である主人公が世界を悪に染めようとする敵に立ち向かい、最終的に倒して平和を取り戻す」が根本になっている。しかし、この作品は「8年後に巨大な隕石が衝突すること、そしてそれが回避不可能であることが判明している惑星、ネオ・ケニア。主人公のケンと恋人であるリンダはこの8年間に多くの動物をつがいで捕獲し、箱舟と呼ばれる宇宙船に乗って惑星が壊滅する前に脱出することになり……」という設定だ。行く手を阻む敵はどこにもいないし、隕石から惑星を救うことはできないし、主人公は勇者ではない。

 

シナリオを進めるにつれ、ゲーム中の時間も経過していく。タイムリミットの8年後に迫っていくと同時に、住民が少しずつ脱出していくためにゲーム中の施設を利用できなくなっていく辺りが非常にリアルだ。

 

また、目的である「動物をつがいで捕獲する」ことも単純にはいかないようになっている。一般的なRPGではレベルを上げていけば敵をどんどん倒せる。しかし、「リンダキューブ」は動物を「倒す」のではなく「捕獲」しなければいけないのだ。動物とのバトル場面で、程よくHPを削ると捕まえることができるが、自分たちの方が高レベルの場合、動物は「飛び散って」しまう。かといって相手が強敵だとこちらが戦闘不能になってしまう。程よいダメージを与えられるか、という緊張感を常に持ってプレイすることを求められるのだ。しかも出現が四季や時期に限られる動物もいるため、ただ単純にレベルを上げれば解決できるわけではない。レベルを上げて物理で殴る戦法が仇になるのだ。

 

動物を捕獲し、箱舟に乗せるのとは別に加工することで武器や防具にも、食料にもなる。「解体屋」という施設では動物から貴重なアイテムを取り出してもらうことができ、モンハンさながらの狩猟生活を味わえる。食料用に加工した肉は所持したままだと腐敗したり、またその肉を狙ったハイエナに襲われたりとこちらの設定もリアルになっている。

 

そして1番特徴的でもあるのが、シナリオが4パターン用意されている点だ。狩猟がメインなのはシナリオCになるのだが、桝田氏本人も「先にAとBをクリアしてください」とコメントしている。シナリオA、Bについてメインのシナリオはそれぞれあるのだが、ノルマの捕獲する数と行動できるエリアがそれぞれ異なる。つまり、シナリオCを遊ぶうえでのチュートリアルになるのだ。プレイヤーはどうすれば動物を効率良く捕獲できるのか、どのような町があるのか、どういった施設を利用できるのかを事前にシナリオA、Bを遊ぶことで把握できる。(シナリオDはタイムトライアルなので割愛)

 

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しかしこのシナリオA、Bは狂気に満ちたものとなっていることで有名だ。人によってはもうこの時点で無理だと感じてしまうかもしれない。

 

シナリオAでは主人公のケンの双子の弟、ネクが中心の物語。ラスボスの正体と、その予想もできなかった行動の伏線にあなたはきっと震え上がるだろう。ラスボスとの最終決戦のBGMが不気味さを煽る。「死体は探すよりも作る方が簡単なのさ」という台詞が、いかにも猟奇的だ。

 

シナリオBは謎の化け物に襲われた2人の主治医、エモリ博士とその娘、サチコが中心の物語。襲われて左手を失ったリンダに施された応急処置があまりにも生々しく、私はプレイしていて思わず「うわあ……」と声に出てしまったほどだ。あと、襲撃してきた犯人の最期があまりにも辛過ぎた。

 

シナリオBではリンダがストーリー上、離脱して代わりにサチコが共に行動する時期がある。その際にエモリ博士がサチコへ「ケンくんとはAまでにしておきなさい。Bは慎みなさい」と忠告するのだが、その言葉の本当の意味を知ったときは絶句するだろう。

 

その血みどろなシナリオ2つをクリアし、ようやく本番のシナリオCに挑むことができる。このシナリオCは完全なパラレルワールドであり、シナリオA、Bで悲惨な結末を迎えたキャラが幸せになっていたり、同じ台詞が全く別のシチュエーションでまた登場する。シナリオA、Bはゲームシステムをプレイヤーに理解させるだけでなく、それまでのシナリオとのギャップを楽しめるためのものだったのだ。

 

そしてシナリオCで2人を乗せた箱舟がたどり着く先は……?これについては様々な考察がされているが、是非ともあなたにも見届けて欲しい。